血液検査で白血球に異常値、40000超え…(後編)

翌日の9月8日の朝でした。その日も子供達を送り出した後、同じ棟の看護師 Iちゃんが様子を見に寄ってくれました。

Iちゃん「連絡あった?」

私「まだ無いんだよね…」

Iちゃん「今、ここで電話して。今日そこで診てもらえないなら、これから一緒に日系病院に行こう」

そしてTing先生にTEL…

私「血液検査の結果を伺いたいのですが、今日伺っても良いですか?」

Ting先生「あー…紹介してくれた日系のドクターと相談してからと思って…あなた、皮膚科系でもなんかあったでしょ」

私「今日、日系病院に行こうと思うので、またお電話します」

そして、Iちゃんと私はタクシーに乗り込み、華やかな都心オーチャードのビルにある日系病院へと向かいました。

診察室にも一緒に入り、先生に、「私は看護師なのですが…」と私の状況を説明してくれるIちゃん。先生も、「あれから、ここの先生達みんなにほうじ茶ラテさんの病状話して聞いてるんだけど、みんなそんな症状、診た経験ないって言うんだよねぇ…」私の病状を心配してくれていて、親身になってくださいました。

まず血液検査をしました。検査の結果が出るまでの間は、小一時間ほど待合室で待ちます。

Iちゃんと久しぶりに長い話をしました。思えば、来星以来の長い付き合いで、しかも同じ棟でしたが、二人で話をするのは滅多に無いことでした。子供の学年も一緒ではなく、お互いの家を頻繁に行き来するようなこともなく、それでも、こんな時に全身全霊で助けてくれるIちゃんは、なんと言う類まれな、素晴らしい人なんだろうと改めて思います。

検査の結果が出て、診察室に呼ばれました。入って行くと、先生の顔が、ただ事ではなく青ざめています。結果は…

白血球42400…

3日前の28400から、さらに倍増していたのです。

「こんな数字、見た事ない…」先生も困惑し、青ざめて言葉を失っています。何か思いつめたように早足で部屋を出入りすると、すぐ戻ってきて「午後空いてる?」「はい、子供のお迎えがあるけどなんとかします」「よし、Ting先生の予約取れたから行ってきて!」すぐに電話で血液内科のTing先生に電話してくださっていて、さらには通訳の手配もしてくださいました。

いや〜〜良かった!!と、安堵した表情になる先生とIちゃん。

Iちゃん「これで、ステロイド治療が始まるんでしょうね」

先生「多分そうなるだろうね。いや〜良かった」

親身になって喜んでくれる二人に、本当にありがたさで恐縮でした。

タクシーで先に帰るIちゃんを見送ってから、ビル内でランチを済ませ、再び隣のビルのTing先生の元へと向かいました。

綺麗なショッピングモールの広さも、道路を渡って隣のビルに移動するわずかな道のりも、本当に長く辛く感じられるほど、足は浮腫み、ふくらはぎは張り、疲労感が激しく襲いました。

そうして、この日から1日40mgのステロイド治療が始まることとなります。

血液検査で白血球に異常値、40000超え…(前篇)

筋肉痛は、ふくらはぎ、一の腕、背中、腰、あごと全身におよびました。

少し歩いただけでも、ふくらはぎが張ってきて痛くてたまらず、また、息切れがして体力が持ちません。家の中でも座るか寝るかでした。

一の腕、背中、腰は、寝ていても痛みました。

こんな調子なので、小学一年生の娘の新学期が始まりましたが、家から5分のスクールバスの発着所まで送り迎えする事も出来ず、本人に言い聞かせて自力で行かせたり、夫や他のお母さんにお願いしなければなりませんでした。

あごの痛みは、食べる時に噛むと起こるのです。なので、固いものは噛めず、また、完食するのに時間がかかりました(もともと早食いだった私には辛かったです…苦笑)。あるいは十分に噛み砕けないまま飲み込んでしまいました。

そして、何と言っても辛かったのは、胃痛でした。食後、右のみぞおち辺りに鈍痛が起こると、それが何時間も…半日くらい続きました。

ひとたび胃痛が起こると、みぞおちを拳でグッと押さえながら、ベッドでうつ伏せになっていました。

食い意地が張っていて、食べる事が大好きだった私には、この胃痛というものが一番辛く、精神的にこたえた気がします。

そうして原因不明の様々な異変を抱えながら、すがる思いで再び、日系病院を受診し、運命の血液検査をすることになります。2017年9月5日のことでした。

こんな数値見たことない…

 

血液検査の結果を見ながら、先生の顔色が変わっていました。白血球の数値が28000超えの28400でした。普通の人は8000〜9000位とのこと。

「健康診断とかでは、これくらいの数値の人はいないんですか?」と聞いたら、「いないいない!」と、激しく手を横に振る先生。

原因が見当がつかないということで、すぐにローカルの血液内科のお医者さんに紹介状を書いてくれました。

予約を取って翌日、ローカルのTing先生を受診。肌つやの良いおじいちゃん先生でした。立派な机の向こう側で、昨日の日系病院からもらった血液検査の結果を見ながら、面接のように質問されます。

Ting先生:Do you have allegy?(アレルギーはある?)

「はい…カビアレルギーがあります」と言いたかったのですが、「カビ」が出て来ずに、辞書アプリで調べたら”mold”と出る。「あ、コレです。モールド。Yeah, I have “mold allegy”」

Ting先生:???

なんか、通じ合えなかったみたい…(汗)ここで英語できないレッテル貼りされ。先生もスマホでアプリいじりだしだな〜と思ったら、なんと「アレルギー」を日本語変換しようとされていた!!てか、おじいちゃんアプリ使えてないし…

なんとか必死で自分の諸症状、筋肉痛があって疲れやすい事などは伝えたのですが、

Ting先生:Your English is….Okay(英語まぁ、出来るんだね)

おいおい、そこじゃないよって言うか…。なんか、悔しい。(苦笑)

血液検査はしたものの、結果はメールするよと言われて、薬ももらえずに帰されました。

しかし、翌日もメールは来ないまま、筋肉痛や疲れやすさなどの諸症状は増していきました。それとともに増していく不安…

同じ棟に住む看護師の友達に「白血球28000ってあんまりない事なの?」とメールしたら、1分後にドンドンドン!!とドアがノックされ、顔面蒼白の彼女が駆けつけてくれました。

今までの状況を話し、ローカルの先生のメール待ちだと言ったら、すぐにこちらから連絡を取れと言ってくれたのです。

足が治ったのは良いけれど@シンガポール

足の見た目がほぼ治って、一安心です。

しかし身体はなんとなくだるく、調子がすぐれません。背中や腰の筋肉痛がひどく、どうも疲れが取れない状態が続きました。

そうこうしているうちに、また足がどうも怪しく、かゆみがぶり返しかけて来ました。

帰国前に受診した日系病院を受診すると、先生も心配してくださっていて、私の足を見るや「えーーっキレイになったねーー!!」と驚き、喜んでくださいました。

日本で処方してもらったステロイドの塗り薬が切れてしまったと話すと、同じものは処方できないようで、 以前と同じFUSIDICという塗り薬を出してもらいました。ですが、これがやはりどうにも効かず…。

アレルギーの薬は出してもらったものの、身体はいよいよだるく、座っていても腰や背中が辛いほどでした。そして、外出先などでムレると足も怪しくなって来て、かゆみの再発に怯えていました。

ここで、私には余ったステロイドの内服薬がありました。

そうです、日本で通院した時、5錠のところを間違えて1錠だけ飲んでいたので、余りがだいぶあったのです。

なので、かゆみのぶり返しや全体的な体調の悪さを抑えるために、数日間、朝一錠を飲んだり、飲まなかったりしました。

そして数日後のある朝。大変なことが起こってしまいました

朝起きて、まず眠気を飛ばすために、オレンジジュースを飲みました。私は柑橘類が大好きで、朝のオレンジジュースは定番でした。

そして、筋肉痛から、うっすら頭痛がしていた私は、鎮痛剤を飲みました。市販薬の、ルルアタックEXです。頭痛持ちの夫がよく日本で爆買いしてくるので、我が家は薬屋が出来そうなくらいにストックが常備されていました。

そして、ステロイドを1錠、飲みました。

そして、程なくして、なんか、胃に違和感がありました。

胃のみぞおち辺りが痛くなり、さらには吐き気がして来て、トイレに行き…。オレンジジュースをザバーっ…。当然、ステロイドも吐いてしまいました。

今思えば、これが、その後に起こる全てのことの「ダメ押しのスタートボタン」だったかもしれません。これを皮切りに、不気味な「胃痛」が始まり、右のみぞおち辺りに鈍痛、さらには胃の裏側、背中の筋肉痛も激しくなり、どうにもならない体の倦怠感との戦いになりました。

翌日、日系病院へ行くと、「基本的には、ステロイドと頭痛薬の飲み合わせのためでしょう」と言われ、胃薬と、「優しい鎮痛剤」を出してもらいました。

しかし、食後の胃痛はそれ以降は慢性化し、筋肉痛や倦怠感も激しくなり、体調はますます悪くなっていきました。

しかも間の悪いことに、ちょうどその数日後、自宅のあるコンドミニアムで、娘の幼稚園の先生やクラスメート、お母さん達を招いたパーティをすることとなっており、準備の真っ最中だったのです。

本当に、この時ほど気持ちに体がついていかない時はありませんでしたが、集まってくださる先生やお母さん方、楽しみにしている子供たちに申し訳がない、という一心で、何とか取り繕おうとしました。一緒に準備を進めていた相方にだけは、体調が悪いと言うことは伝えましたが、その時点では自分自身も、自分の体で何が起こっているのが、見当もつかなかったのです。

身体がしんどいながらも、一緒に準備していた友人をはじめ、夫、先生や他のお母さん達に尽力してもらい、楽しい会となり無事にパーティーは終わりました。なんとかその日を乗り切ることが出来た時は、達成感に全てが報われる思いでした。

しかしその夜、全ての力が抜けてベッドに身を投げ出した時に、異変は起こりました。右の太ももの内側が痒いのです。見ると、バーっと赤い発疹が出ていました。

蕁麻疹のような赤い発疹は、急いで水シャワーで洗い流し、掻かずに様子を見ていたら、だんだんおさまって来ました。

気持ち的にも少し落ち着いて来た翌日の夜、娘と一緒に夜9時ごろ就寝。

夜中に目が覚めた時でした。

夫が、私を見て「どうした?!」と目を見開き、驚いています。

トイレに行って、鏡を見ると…

「あれっ?!」

こめかみに、コブが…

血管がボコッと浮き出たように、左のこめかみの、おでこに近いところに、1.5センチくらいのコブのようなものが飛び出していたのです。

触って押すと、ペコペコと引っ込みます…(怯)

痛くも何ともないだけに、不気味でした。動揺しながら、急いで保冷剤をハンカチで包んだものを押し当てて、じっとしていました。

しばらく経って、恐る恐る鏡を見ると、コブは何事もなかったかのように引っ込んでいました。

一体何だったんだろう…。

コブが出現したのは、それが最初で最後でした。

ただ、何とも言えない不気味な、何かが、自分の身体の中に潜んでいる…という不安が、じわじわと募っていきました。

発症の判明する、数日前のことでした…。